今回はちょっとだけ難しいお話です。
オーバーヒート⇒エンジンが熱くなって車が動かなくなる。
だいたいこれで「オーバーヒート」はざっくりとOKです。合ってます。
では、実際にどうなっているんだ!?
って所を詳しく解説していきます。
エンジンが熱くなって車が動かなくなる。
いいかえると
↓
エンジンが正しく冷却出来ず、限界を超えた温度になり、オーバーヒートとなる。
大きな要因が「冷却性能の低下」ということになります。
他にもオーバーヒートの要因はありますが、今回は冷却にクローズアップします。
エンジンの冷却の仕組みとクーラントの状態
冷却機能が大事ということは前回もお伝えしたとおりで、通常走行時の水温は約80℃前後。
夏場の渋滞でハマってしまった時などでは100℃前後が一般的です。
外気は熱く、ラジエータに風があたらず、のろのろ走行。エンジンには過酷な状態です。
オーバーヒートが起こりやすいのもこのシチュエーションが多いです。
100℃というと水が沸騰する温度。
心配になる方も多いと思いますが、ラジエータ内には圧がかけられ沸点は上がるので、100℃でも沸騰しません。
しかし、
沸点を超えれば液体は沸騰します。
クーラント内部の気圧により多少沸点は上がりますが、限界はあるわけです。
クーラント液が沸騰する。つまり、クーラントの限界を超えると、クーラントはその性能が格段に低下します。
ひとつエンジン内部のLLCが沸騰する様子の画像を用意しました。
シリンダー内部では爆発が起き約1000度近くまで上がっています。
※下図左のオレンジの箇所です。
シリンダーを囲むようにクーリングジャケット(ウォータージャケット)と呼ばれる冷却水が流れる経路があり、ここに冷えたクーラント液が循環し、エンジンを冷ましています。
上図の右側がウォータージャケット内の沸騰の様子です。
Aの矢印は自然な沸騰
Bの矢印はいわゆるホットスポットと呼ばれる熱溜まり箇所での沸騰です。
なぜクーラントの性能が低下するのか。
クーラント(LLC)の主成分は「水」です。
そして、水は気化しやすい物質で、気化する際、気泡が発生します。
沸騰時の泡や気泡、空洞などは熱源に正しく液体が接触できないため、クーラントの冷却性能が低下します。
気泡が発生する主な要因
・ホットスポットでの沸騰による気泡
・ウォーターポンプ内での撹拌による圧力の変化による気泡
ホットスポットでの沸騰による気泡
ホットスポットとは、熱源の中で特に高温の部分に起こりやすくなります。
クーラントは沸騰し、ぶくぶくと煮えたぎる壁面には冷たいクーラントは接地できず、
熱を奪うことができず、局地的にさらに高温になっていく箇所の事です。
ウォーターポンプ内での撹拌による圧力の変化による気泡
ウォーターポンプは冷却水に水流を作るポンプです。
パーツの内部ではプロペラが回り、冷却水を高速で循環させます。
水中カメラなどで船などのスクリューが回る映像をご覧になったことがないでしょうか
高速で回るスクリューなどで起こした液体の流れの中で圧力が低くなった時、液体が気化し
小さな気泡が生まれます。
難しい言葉では「キャビテーション」ともいわれます。
この「気泡」は悪さをします。
この気泡が冷却性能の低下を招く要因です。
クーラント(LLC)を交換せずに長年使い続けたり、高回転で乗り続けると冷却経路内ではこのような事が起こります。
気泡の周りの液体が圧力により気泡内部に向かっていくと、気泡が割れます。
割れた瞬間に気泡には反発力が発生し、いわばプチ爆発に近い衝撃波を伴う物理現象が起こります。
この爆発が冷却経路内部のパーツにダメージを与えてしまい、腐食や劣化の引き金になります。
ウォータージャケット内で起こり続ければ、エンジンの壁面をそぎ落とし、最悪エンジンの寿命を縮めることにもなります。
オーバーヒートしないようにするには冷却系統がとても大事です。
たかだかクーラントと甘く見ず、冷却システムをきちんとメンテナンスし、
定期的なクーラントの入れ替えを行いましょう。